天使に会いました。
天使「やほ!また会ったね。あ、でも今の君とは初めましてかなあ。
まあいいや、ちょっと話に付き合ってよ。袖振り合うも〜っていうからね。
ん、そういえば今の時代の君たちは小袖を着なくなって久しいんだっけ。
ここ100年ちょっとで随分と袖が小さくなって、現代人は縁を感じられなくなっているって輝様が言ってたよ。
もし君がねー、日々生きているときどうしようもない孤独と寂しさを感じていたなら、
きっと縁が足りなくなっていたんだよ、たぶん。
だからときどき箪笥の中から小袖を取り出して着てみるといいんじゃないかなあ。
あとは、ほら、なんだっけ……モエ袖?だっけ。流行ってるやつ。
あれいいね。小さめだけど、ひらひらしているから触り合いやすくて。
最近は着脱式のモエ袖も売ってるんでしょう?君もそれ付けるといいよ。
かわいいし。
みんなが袖をつければボロボロになってボクのところに帰ってくることもなくなるのかなあ。
そうそう聞いてよ。今日君を引き止めたのはこの話をしたかったからなんだ。
ここのところ、ボクのところに帰ってくる魂髄がみんなズタズタでね。
袖が小さくなったにしてはちょっと異常だなって思うんだけど、どうしてなんだろう。
今までも、ちょっと欠けたり傷が入ったりして帰ってきたことはあったけど、こんなの初めてだ。
それで、癒やしてもう一回送り出すこともできないくらいグチャグチャのボロボロになっているから仕方なく瓶詰めにしているんだけど、
あのねー、心が全然動かなくなっちゃった。
最初のうちはね、こんなにボロボロになって辛かったねー、苦しかったねー、怖かったよねって、思って……瓶に詰めるのもね、……ごめんねごめんねって言って、おへその上あたりが気持ち悪くなったりしてたんだけどね。
あはは、ちょっとしてからはね、全然そんな事考えなくなっちゃって。瓶にちゃんと入らない子なんかね、ボクの指で4つか5つくらいに引き裂いて、ぐいっぐいっ、って押し込むんだ。可哀想だから最初はやってなかったんだけど、瓶の上の方がスカスカだ、って輝様に怒られちゃって。
でもやってみたら全然申し訳なくなかったんだよ。これがボクの使命だから普通のことだって思ったんだよ。
ねえどうしよう、ボク心のない生き物になっちゃった。
あんなに君たちを愛しているつもりだったのに。
僕は結局いい天使になれなかったんだ。
君たちに、恒久的かつ無限の愛を絶え間なく注ぐいい天使になりたくていい天使のふりをし続ける、悪い天使なんだ。
ボクは、どうしたらいいのかな。」
私「奉祝!」